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SMTメタルマスクメーカー12社と現場力を高める自社修正術

SMT工程(表面実装)のハンダ付けに使われる治具、「メタルマスク」。 ステンレス鋼(SUS304など)の厚み0.1~0.2mm程度の薄い板に、レーザー加工等で開口部を形成したものです。

基板のランド部にのみ正確にクリームはんだを転写する役割を持ち、実装における印刷品質の約70%はこのメタルマスクに左右されると言っても過言ではありません。

この記事では、国内の主要メタルマスクメーカーを紹介するとともに、QCDを劇的に高めるための「自社での開口部修正ノウハウ」について解説します。選定や運用に迷っている方のヒントになれば幸いです。

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国内メタルマスクメーカー12社一覧

普段お世話になっているメーカーから新規開拓の候補まで、自社工場で生産している国内メーカーを一覧表にしました。(※商社経由は含まず、実際に使用したことのある8社を含みます)

メーカー名本社国内工場海外工場
タク技研長野県長野県マレーシア
サン工芸東京都東京都
中沼アートスクリーン京都府京都府
メイコーテクノ神奈川県神奈川、埼玉、愛知、佐賀中国、ベトナム
プロセスラボミクロン埼玉県埼玉、愛知、佐賀中国、ベトナム
ボンマーク東京都長野県中国、台湾、タイ
太陽誘電ケミカル 群馬県群馬県
イトウプリント長野県長野県、三重県
東海神栄電子工業(旧 中山理研)岐阜県岐阜県
ソノコム東京都神奈川県、千葉県
東京プロセスサービス神奈川県神奈川県、石川県タイ
アサヒテック愛知県愛知県アメリカ、中国、インド
【この表から分かる業界の傾向】
  • 国内だけでも選択肢が豊富にある。
  • 関東地方や長野県など東日本にメーカーが集中しており、コスト競争も激しい。
  • 長野県は時計などの精密製品加工の歴史的背景からメーカーが多い。
  • プロセスラボミクロンと東京プロセスサービスは同系列会社。

メタルマスク仕様・オプション比較

メーカーによって、標準仕様に追加できるオプション(脱着式、撥水加工、研磨など)に違いがあります。

メーカー名脱着式枠 撥水加工 コーティング  研磨処理その他独自技術
タク技研不要(内壁抜群)
サン工芸
中沼アートスクリーンメッキ加工、特殊樹脂加工
メイコーテクノ凹凸影響低減、凹凸追従性向上
プロセスラボミクロン
ボンマーク
太陽誘電ケミカル独自処理樹脂コート
イトウプリント
東海神栄電子工業
ソノコム
東京プロセスサービス   
アサヒテック金属箔微細孔加工

💡選定時の注意点
オプションも魅力的ですが、一番重要なのは「標準仕様での開口部内壁が平滑であること(レーザー切削技術の高さ)」です。基礎技術が高いメーカーを選定した上で、自社の課題に合わせてオプションを追加するのが王道です。

究極の現場力:メタルマスク開口部の「自社修正」

良いメーカーを選ぶことは大前提ですが、現場力をさらに高め、コスト削減と歩留まり向上を実現するために有効なのが「開口部修正を自社で行うこと」です。

外注 vs 自社修正のメリット比較

印刷不良(ブリッジやはんだ不足など)が発生した際、メーカーへ再製作を依頼するのと、自社で修正・調整を行う場合の違いを表にまとめました。

比較項目メーカー外注(再製作)自社での開口部修正
即応性(リードタイム)数日の生産ロスが発生当日~数時間以内で復旧可能
コスト数万円/枚の追加費用実質0円(既存マスクの寿命延長)
PDCAサイクル遅い超高速(印刷→修正→評価の社内ループ)
独自のノウハウメーカー側に蓄積される自社の財産としてデータ化・蓄積される

多品種小ロット生産が求められる現代において、BGAや0402サイズ等の微小部品の微調整を即座に行える体制は、新製品立ち上げのリードタイム短縮に直結します。

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品質を担保する検証プロセスと管理基準

自社修正で最も重要なのは、「修正後の品質担保」です。以下の手順と基準でSPI(はんだ印刷検査装置)と目視確認を徹底します。

確認項目確認方法合格基準(ターゲット)
開口形状精度SPI / マイクロメーター / 顕微鏡設計値に対し±10%以内(幅・高さ±5μm以内)
はんだ量(体積)SPI体積測定スペック値の 75% ~ 125%
欠け・バリ目視 / 拡大鏡一切なし
連続印刷安定性実基板連続100回テスト印刷不良率 0.5%未満
全体歩留まり実基板テスト99%以上

📌トレーサビリティの確保
誰が、いつ、どの数値を修正したか、修正履歴をメタルマスク自体にマーキングして追跡できるようにすることが運用上のキーポイントです。成功事例は社内基準書に反映し、次回発注時の最適化に繋げます。

「勘」ではなく「データ」で品質を証明する

自社でマスクを開口修正した場合、最も重要なのは「修正の根拠」と「結果の評価」を社内に説明できるスキルです。 JTEXの通信講座(品質管理検定コースや生産技術・現場改善コース)で体系的な知識を身につければ、SPIのデータ検証や歩留まりの統計管理が論理的に行えるようになり、自社修正の取り組みを「会社の公式な基準」へと昇華させることができます。

作業を効率化する推奨ソフトウェア(CAM)

自社での開口形状変更、スリット追加、面積計算などを自動化・高速化するためには、専用のCAM編集ソフトの導入が効果的です。代表的な2つのソフトを紹介します。

ステンシルCAM(ダイナトロン株式会社)

【豊富なテンプレートとODB++連携で、極小部品の開口編集を劇的に効率化】 ホームベース形やスリット形などの「開口形状テンプレート」が標準搭載されており、一括変換が直感的に行えます。ODB++データと連携し、BOM情報を活用して同サイズの部品ごとに最適な開口形状を自動配置できるのが最大の強みです。 参考:ステンシルCAM 製品ページ

CiCAM Metal(株式会社シーエィディプロダクト)

【直感的な操作と強力な形状置換機能で、スピーディーな自社修正を実現】 Gerberデータ(RS-274D/X)の読み込みに完全対応。既存データからのスリット・Vカット作成、XYで異なる倍率の拡大・縮小などが可能で、現場でのスピーディーな微調整に威力を発揮します。30日間の評価ライセンスで手軽に試せる点も魅力です。 参考:CiCAM Metal 製品ページ

あなたのその「専門スキル」、安売りしていませんか?

メタルマスクの開口形状を自ら考案し、CAMソフトを扱って歩留まりを改善できるエンジニアは、製造業界では喉から手が出るほど欲しい人材です。 もし今の会社が「新しいソフトウェアの導入コスト」すら渋るような環境なら、あなたの技術力は正当に評価されていません。最新の設備と適正な評価制度が整った優良企業で、そのスキルを存分に発揮してみませんか?

印刷品質を制し、工場のQCDを最大化するために

日本国内には優秀なメタルマスクメーカーが多数存在し、その精密加工技術は世界一です。まずは自社の基板や設備と相性の良いメーカーを見極めることが大切です。

さらにそこから一歩踏み込み、「自社での修正・検証ノウハウ」を構築することで、トラブルへの即応力が高まり、結果的に大きなコスト削減と生産性向上に繋がります。

今回のリストや選定基準、管理ポイントを参考に、現場のQCDを最大化する最適なはんだ印刷プロセスを作り上げてください。

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この記事を書いた人

現場・生産技術・法人営業・マネジメントを経験。
机上の空論ではなく「現場で役立つ知見」を発信。
・昇格したばかりの課長としての奮闘記
・現場改善・AI活用の実践例
・人間関係・キャリアの悩みへの具体的な解決策
・介護と仕事の両立経験からのリアルなヒント

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