リフロー炉から出てきた基板を見て「またブリッジか…」とため息をつく。SMTの現場なら誰もが経験する光景です。この記事では、現場歴20年以上の私が、はんだ不良を「症状から逆引き」できる対策一覧をまとめました。
先に現場の定説を言っておくと、SMTはんだ不良の7〜8割は印刷工程に起因します。リフロー炉の設定をいくらいじっても直らない不良が、印刷条件の見直し一発で消えることは珍しくありません。「どの工程を疑うか」の当たりをつけるために、この記事を使ってください。
✅ 症状別・原因工程の早見表(保存版)
✅ ブリッジ・はんだボール・チップ立ちなど主要7不良の原因と対策
✅ 印刷・実装・リフローのどこを疑うかの切り分け手順
✅ 不良を未然に防ぐ日常管理3点セット
まず全体像|症状別・原因工程の早見表【保存版】

現物の症状から「最初にどの工程を疑うべきか」をまとめました。迷ったらこの表に戻ってください。
| 症状 | 主な原因工程 | 最初に疑うポイント |
|---|---|---|
| ブリッジ(ショート) | 印刷 | 印刷にじみ・版離れ・マスク汚れ |
| はんだボール | 印刷/リフロー | クリームはんだの吸湿・プリヒート急加熱 |
| フィレット不足・かすれ | 印刷 | 開口アスペクト比・粘度・充填不足 |
| チップ立ち(マンハッタン) | 印刷/実装 | 印刷量の左右差・ランド熱バランス |
| 位置ずれ | 実装 | マウンタ吸着・搬送振動・セルフアライメント不足 |
| ぬれ不良 | リフロー/材料 | 基板・部品の酸化、プロファイル不足 |
| ボイド | リフロー | プリヒート不足・溶剤揮発・ランド設計 |
| はんだ飛び・スプラッタ | 印刷/環境 | 静電気・湿度・急加熱 |
印刷起因の不良と対策(全体の7〜8割はここ)
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ブリッジ(ショート)
隣接するパッド同士がはんだでつながる、最も代表的な不良です。ファインピッチのICで多発します。
- 印刷にじみ:スキージ圧が高すぎる、印刷速度が速すぎる、粘度低下を疑う
- 版離れ不良:基板とマスクのギャップ、版離れ速度を確認
- マスク裏の汚れ:クリーニング頻度を上げる。連続印刷枚数に対して自動クリーニングの設定が適切かを見直す
- 印刷量そのものが多い:条件で吸収できないときは、開口の縮小・スロット化・ステップマスク化など印刷量自体を減らす設計対応を検討する
私の現場では、ブリッジ多発時はまずマスク裏の拭き取り頻度から見直します。設備をいじる前にできる、一番安い対策だからです。
▶ ブリッジだけを詳しく知りたい方は はんだブリッジとは?原因と対策を手はんだ・リフロー別に解説 へ。
はんだボール
チップ部品の脇に小さなはんだの球が飛び散る不良です。原因は大きく2系統あります。
- 印刷系:印刷ずれでレジスト上にペーストが乗る、にじみでランド外にはみ出す
- 材料・リフロー系:吸湿したクリームはんだの水分が急加熱で暴れる。開封後の放置時間、冷蔵庫からの戻し時間(結露)を確認
梅雨時に急増したら、ほぼ間違いなく吸湿です。クリームはんだの管理ルールを見直してください。
フィレット不足・かすれ(はんだ量不足)
印刷の充填・転写不足が主原因です。特に小さい開口(0402など)ではアスペクト比・面積比の設計限界を超えていないかをまず計算してください。当サイトの無料計算ツールで一発で判定できます。

はんだ飛び・スプラッタ(環境起因)
印刷やリフローの条件をいくら詰めても消えないはんだ飛びは、環境系の原因を疑ってください。
- 静電気:イオナイザーの設置、設備アース、ESDシューズ・マットの運用を確認する
- 湿度:室内湿度を40〜60%RH程度の一定範囲で管理する。乾燥しすぎは帯電を、多湿は吸湿を招く
- 急加熱:プリヒートの昇温レートが速すぎないかプロファイルを確認する
実装(マウント)起因の不良と対策
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チップ立ち(マンハッタン現象)
チップ部品が墓石のように立ち上がる不良です。リフロー中に両端の溶融タイミングがずれ、片側の表面張力に引っ張られて起きます。
- 印刷量の左右差(片側だけかすれていないか)
- ランド設計の熱バランス(片側だけベタパターンにつながっていないか)
- マウントずれ(片端しかペーストに触れていない)。搭載位置と押し込み量をチューニングし、印刷パターンとのオフセットを最小化する
- 対策を尽くしても不安定なら、N2(窒素)雰囲気リフローでぬれ性を安定させ、セルフアライメントを効かせやすくする選択肢もある
位置ずれ
セルフアライメントで補正しきれないレベルのずれは、マウンタの吸着ノズル摩耗、部品認識、搬送時の振動を疑います。リフロー前後どちらでずれているかをまず切り分けてください。
なお、欠品や「ロットにより出たり出なかったり」する実装機まわりの不良は、切り分け方を別記事で詳しく解説しています。

リフロー起因の不良と対策
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ぬれ不良(はんだが広がらない)
はんだがランドや部品電極になじまず、弾かれたようになる不良です。
- 材料の酸化:基板の保管期間・部品の開封履歴を確認。海外ベアボードに切り替えた直後なら表面処理の品質差も疑う。保管が長い基板・部品は洗浄やプリベークなどの前処理も検討する
- 熱量不足:プロファイルの本加熱ピーク温度・時間を実測する
- フラックス活性切れ:プリヒートが長すぎて活性剤が先に消耗していないか

ボイド(はんだ内部の空洞)
X線検査で見つかる内部の気泡です。ゼロにはできませんが、率は管理できます。プリヒートで溶剤を十分に飛ばす、ピーク時間を確保する、大きなサーマルパッドはランド分割を設計側に相談する、が定石です。温度プロファイルの考え方はこちらの記事にまとめています。

どの工程を疑うか|切り分けの手順

不良が出たとき、いきなり条件をいじるのは悪手です。「どの工程の直後から発生しているか」を遡って特定するのが最短ルートです。
リフロー後の不良品を分類し、症状名を特定する(上の早見表)
印刷直後の基板を抜き取り、SPIまたはルーペで印刷状態を確認する
印刷が正常なら、マウント後の部品位置を確認する
そこまで正常なら、リフロープロファイルを実測する(設定値ではなく実測値)
この順番で見れば、原因工程は1時間もかからず特定できます。印刷工程の品質づくりについては、こちらで詳しく解説しています。

不良を未然に防ぐ日常管理3点セット

不良対策の最後は「出てから直す」ではなく「出さない管理」です。私の現場で効果が大きかった順に3つ挙げます。
- ① クリームはんだの管理:冷蔵保管、使用前の常温戻し(未開封のまま室温に戻す。冷えたまま開封すると結露が混入し、はんだボールやぬれ性低下の原因になる)、開封後の使用期限、撹拌条件、版上寿命(ポットライフ)をルール化する
- ② メタルマスクの清掃管理:自動クリーニングの頻度と手拭きのタイミングを標準化する
- ③ 温度プロファイルの定期実測:月1回は実基板で実測する。炉の設定値と実測値は必ずずれてくる
クリームはんだの種類選定や保管の詳細は、こちらの完全ガイドを参照してください。

管理職向け|「仕組み」で不良を減らす3つの打ち手

最後に、ライン全体を見る立場の人向けです。個別の対策より効くのは、不良が出にくい仕組みづくりです。私の現場で効果があった順に3つ挙げます。
- ① ロット別・保管履歴別の不良率集計:ペーストのロットと保管履歴を紐づけて不良率を集計する。「保管ルールを守ると不良が減る」ことがデータで見えると、現場がルールを守る動機になる
- ② ペースト状態チェックの標準化:ツヤ・糸引き・ロール性といった目視・触感評価をチェックシート化し、印刷担当者の暗黙知を全員の技術にする
- ③ 新規ペースト導入時の条件出しをセットで実施:印刷条件の実験計画(DOE)とリフロープロファイル最適化を導入時にまとめてやり切り、「このペーストのスイートスポット」を最初に決めてしまう。後から場当たり的に調整するより結局安くつく
まとめ|不良は「犯人捜し」より「工程の遡り」

はんだ不良への向き合い方をまとめます。
- 症状から逆引き:まず早見表で「疑うべき工程」の当たりをつける
- 不良の7〜8割は印刷起因。リフロー設定より先に印刷を見る
- 切り分けは工程を遡る。1時間で原因工程は特定できる
- 最後は日常管理。ペースト・マスク・プロファイルの3点を標準化する
不良対策は、原因と対策の「引き出しの数」がそのまま解決スピードになります。この記事をブックマークして、現場で困ったときの逆引き辞典として使ってもらえたら嬉しいです。

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