「このロットだけ欠品が多い」「先週は出なかったのに今週はずれが多発」「しかもマウンタはエラーも出さずにスルーしている」——実装現場で一番モヤモヤする不良のパターンです。
こういうとき、真っ先に実装機の設定やノズルを疑いたくなりますが、ロットにより出たり出なかったりする不良は、設備・印刷・部品/基板の複合要因であることが多いです。設備だけをいじり続けると迷宮入りします。この記事では、現場歴20年の私が使っている切り分けの手順をまとめました。
✅ 浮き・ずれ・欠品を三方向で切り分けるフレーム
✅ エラーが出ずにスルーする欠品の3パターンと対策
✅ 0603・1005など微小チップで多発する場合の重点ポイント
✅ ロット依存か設備依存かを見える化するマトリクス分析
結論|「設備・印刷・部品/基板」の三方向で切り分ける
ロット依存の実装不良は、まずこの3方向のどれかに当たりをつけるところから始めます。
| 方向 | 主な要因 | 典型的なサイン |
|---|---|---|
| A. 実装機・設備 | ノズル摩耗・汚れ・真空不良、フィーダー送り不良、ライブラリ設定差 | 特定のマウンタ・ノズル番号・フィーダー位置に偏って発生する |
| B. 印刷・はんだ条件 | パッドごとのはんだ量差、印刷位置ずれ、ペーストロット差 | 浮き・ずれが特定パッド側に偏る。印刷検査データと相関がある |
| C. 部品・基板ロット | テーピング状態、端子めっき・ぬれ性、基板反り・パッド仕上げ | 部品ロットや基板ロットを切り替えると発生率が変わる |
「特定の設備に依存して出るなら設備寄り、ロットに依存して出るならB・C寄り」——これが大原則です。
B方向(印刷・はんだ条件)の詳しい対策は、症状から逆引きできるこちらの保存版にまとめています。

症状別|どこを見るか

浮き(片浮き・スタンドオフ)
- 主因:左右パッドのはんだ量差・印刷位置ずれ/搭載位置の片寄り/プロファイル不適でセルフアライメントが効いていない
- 見る所:不良ロットと良品ロットで印刷外観(SPIがあれば3Dデータ)を比較する。対象パッドだけ量が少なくないか、版詰まりがないか
- 設備側:搭載オフセット(X/Y/θ)、部品高さ・押し込み量の設定を部品図と照合する
ずれ(X/Y・回転)
- 主因:ライブラリ設定(部品サイズ・中心座標・吸着高さ)の不適/ビジョン認識が部品ロットの色味・形状差に追従できていない/基板クランプ・反りで基準面が変動
- 見る所:マウンタの認識画像ログで部品中心検出が安定しているか。問題ロットで「オフライン1枚抜き」しても再現するか
- 部品側:テーピングのポケット内で部品が寝ている・立っているなど姿勢差がないか
欠品(部品が乗っていない)
- 主因:ノズル汚れ・摩耗・真空不足によるピックミス/フィーダー送り不良/テーピング異常(ピッチ・カバーテープ剥離性)
- 見る所:マウンタログの吸着エラー・リトライ履歴。同じノズル番号・同じフィーダー位置に集中していないか(番号依存なら設備側が濃厚)
- 即効テスト:問題フィーダーを別スロット・別号機に付け替えて再現するか見る。ノズルを入れ替えて不良が移動するか見る
エラーが出ずにスルーする欠品|3つのパターン

厄介なのが「欠品しているのにマウンタがエラーを出さない」ケースです。原因は大きく3系統に分かれます。
パターン1:「吸着したつもり」になっている
- 真空センサの閾値が甘い:空吸い・半吸着でもOK判定になっている。正常吸着時と空吸い時の真空値を実測し、閾値を絞り込む
- ノズル径と部品サイズのミスマッチ:ノズルが大きすぎると部品なしでも真空が立ち、空吸いを検知できない。メーカー推奨のノズル径表と照合する
- ノズル先端の汚れ・はんだボール付着:汚れがフタになって真空が抜けず「吸えた」と判定される。欠品の多いノズル番号を特定し、先端を顕微鏡で確認・交換する
パターン2:ピックはできたが途中で落ちている
- フィーダー送り不良・テーピング品質:ピック位置に部品が正しく来ておらず、浅い吸着のまま搬送中に落下。ロット依存の欠品はここが怪しい
- 搬送中の落下を監視していない:真空監視が「ピック時のみ」だと、搬送中に落ちてもエラーにならない。搬送中監視ができる機種ならONにする
- 加減速が速すぎる:小型・軽量部品は搬送速度・加速度を少し落として様子を見る
パターン3:そもそも検知する設定になっていない
- 対象部品だけ吸着チェックが「なし/簡易」になっていないかを確認する
- 実装後のプレース検査(部品有無カメラ確認)がある機種なら、対象部品が検査リストから漏れていないか、閾値が適切かを確認する
- 最終的にはAOIで確実に検出して流出だけは止める。検査側の考え方はこちらの記事も参考にしてください

0603・1005など微小チップで多発する場合

微小チップは「少しの変化で一気に歩留まりが崩れる」領域です。部品が軽いため吸着有無での真空変動が小さく、装置は吸ったつもりでも実は乗っていないという状態が起こりやすくなります。
- 専用の吸着プロファイル:0603/1005用に真空閾値を別途設定し、他部品より厳しめにする
- 専用ノズルの徹底:推奨径より大きいノズルの流用をやめる。微小チップ用ノズルは洗浄周期も短めに運用する
- テーピング比較:欠品の多いロットと良品ロットのテープを顕微鏡で並べて比較する。ポケット内の部品姿勢・ピッチ・カバーテープ剥離具合の差は肉眼では分かりにくい
ロット依存か設備依存か|マトリクスで見える化する

管理職としておすすめしたいのが、勘で議論せずマトリクス集計で一発で見える化することです。作り方は簡単で、次の表を1週間分のデータで埋めるだけです。
| 部品ロットX | 部品ロットY | 部品ロットZ | |
|---|---|---|---|
| マウンタ1号機・ノズルA | 0.8% | 0.1% | 0.1% |
| マウンタ1号機・ノズルB | 0.2% | 0.1% | 0.1% |
| マウンタ2号機・ノズルA | 0.7% | 0.1% | 0.2% |
この例なら「ロットX×ノズルA」の組み合わせで悪化しており、ロットと設備の相互作用まで見えます。縦軸に設備(号機・ノズル番号・フィーダー位置)、横軸にロット(部品・基板・ペースト)を取るのがコツです。
現場で潰す順番|5ステップ

- 過去データから「特定マウンタ・ノズル・フィーダーに偏っていないか」を確認する
- 偏りがあれば、その設備系を重点メンテ(ノズル交換・フィーダー付け替えテスト)する
- それでもロット依存が残るなら、テーピング状態・基板反り・パッド仕上げ・ペーストロットを比較調査する
- 並行して、問題部品のライブラリ(サイズ・吸着高さ・押し込み量・認識条件)を部品図と照合し直す
- 可能なら不良ロットで1枚だけカメラ録画しながら実装し、ピック〜搬送〜実装のどこで異常が起きるか目視で掴む
特にステップ5は地味ですが効きます。「テープに最初から部品が入っていなかった」という拍子抜けの真因が録画で見つかることもあります。
まとめ|設備だけを疑わない

- ロット依存の実装不良は、設備・印刷/はんだ・部品/基板の三方向で切り分ける
- エラーなしの欠品は「吸着したつもり」「途中落下」「検知設定漏れ」の3パターンを順に潰す
- 微小チップは専用ノズル・専用閾値・テーピング比較の3点セット
- マトリクス集計でロット依存か設備依存かを見える化してから手を打つ
実装機は「設定した通り」にしか動きません。出たり出なかったりの裏には、必ず変動している何かがあります。この記事の切り分けフレームで、その「何か」を最短で見つけてください。
マウンタの機種選定や、SMT工程全体の流れはこちらの記事でも解説しています。



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