「辞めますと伝えたら、引き止められた。どうしよう」
そう思ってこのページを開いた方に、先に伝えておきたいことがあります。
私はいま、電子部品の工場で課長をしています。部下は約40人。中途採用の面接官もしています。
つまり私は、部下から「辞めたい」と言われる側です。
そして、その立場の私には、本音が2つあります。
- 人としては「後悔しないならば、辞めればいい」と思っています
- 管理職としては「辞めると調整が大変だから、辞めないでほしい」と思っています
どちらも本当の気持ちです。この記事では、この2つを正直に書きます。
先に結論です。
- 引き止めの言葉の裏には、上司の側の事情もあります。それを知ったうえで、決めるのはあなたです
- 辞めたい理由が職場の中で変えられるものなのかを、一度だけ確かめてみてください
- 気持ちが決まっているなら、感謝・決めたこと・引き継ぎの3つで、落ち着いて伝えれば大丈夫です
- 期間の定めのない雇用(いわゆる正社員など)なら、法律上は退職の申し入れから2週間で雇用が終わります(契約社員などの有期契約は別。くわしくは後半で)
「辞めるな」とも「辞めろ」とも言うつもりはありません。あなたが自分で決めるための材料として読んでください。
(部下に「辞めたい」と言われた管理職の方は、後半の「部下に辞めたいと言われた管理職の方へ」の章から読んでも大丈夫です)
私は「辞めたい」と言われる側で、言った側でもある
部下から「辞めたい」と言われたのは3回くらい
課長として、部下から「辞めたい」と言われたことは、これまでに3回くらいあります。
そのたびに、まず話をしました。どんな理由なのかを聞きました。
そのうち1名は退職しました。ほかの人は、今も辞めずに続けています。
辞めずに続けている人とは、何が理由なのかを聞いて、お互いに改善しました。そのとき出てきた理由は、人間関係でした。
(誰がいつ、どの職場で、という話は書きません。部下が特定されないようにするためです)
私も昔、上司に引き止められた
私自身も、昔、辞めたいと思ったときに上司に引き止められたことがあります。
生産技術をやっていた30代のころです。辞めたいと思った理由は、うまく結果が出ないことでした。
そのとき上司から伝えられたのは、私の将来のこと、そして私が成長していることでした。
結局、私は続けました。ここで踏ん張れば成長できる、自分のノウハウが増えると思えたからです。
(そのころの話は、「評価されない仕事」の正体|部下約40人を評価する課長の本音にも書いています)
辞めたいと言われる側と、言った側。その両方の立場から、この先を書きます。
本音①:人としては「後悔しないならば、辞めればいい」
一人の人間として、私が思っていることはこれです。
後悔しないならば、辞めればいい。
これは心の中で思っているだけではありません。実際に、部下に伝えたことがあります。
ただ、この言葉でいちばん大事なのは「後悔しないならば」の部分です。辞めたいと言われたら、私はまず理由を聞きます。
本音②:管理職としては「辞めると調整が大変だから、辞めないでほしい」
もう一つの本音です。こちらは、部下に伝えたことはありません。
辞めると調整が大変だから、辞めないでほしい。
人が一人抜けると、人員配置などの調整をし直すことになります。製造の現場では、持ち場の割り振りや引き継ぎも考え直さなければなりません。
だから、引き止めの言葉の裏には、上司自身の都合が混ざっていることがある。これは、辞めたいと言われる側として正直に認めます。
上司の都合を知ったうえで、どう受け止めるか
ここで伝えたいのは、「だから上司の言うことは聞かなくていい」ではありません。
私自身の中には、「後悔しないならば辞めればいい」と「辞めないでほしい」が、両方同時にあります。引き止めの言葉に都合が混ざっていても、それだけで全部がウソだとは限りません。
大事なのは、引き止めの言葉を聞いたときに、
- これは自分のための話なのか
- それとも職場の都合の話なのか
を、自分の頭で分けて受け止めることです。
職場の都合の部分は、あなたひとりで背負わなくていいと私は思います。困るのは事実でも、人が抜けたあとの調整は、職場の側で考えることです。
(管理職の立場のしんどさについては、管理職は孤独?課員は今、私は未来を見ているにも書いています)
引き止められたら、まず「辞めたい理由」を分けてみる
引き止められて迷っているなら、一度だけ、辞めたい理由を紙に書き出してみてください。
そのうえで、その理由が次のどちらなのかを考えます。
職場の中で変えられるかもしれない理由
たとえば、人間関係、持ち場や担当、働き方などです。
(私の部下の場合も、理由は人間関係でした)
職場の中では変えられない理由
たとえば、やりたい仕事がその会社にない、家庭の事情で住む場所が変わる、などです。
こうした理由は、引き止められても小さくなりにくいものです。
決めるときに、自分に聞いてほしいこと
辞めて、後悔しないか。残って、後悔しないか。
どちらの答えが「後悔しない」に近いか。それが、あなたにとっての答えだと思います。
(異動の話が引き金になっている方は、異動したくない人へ|社内異動7回、いま異動を伝える側の課長の本音も参考になるかもしれません)
引き止めのタイプ別、受け止め方と断り方
ここからは、気持ちが「辞める」で決まっている方のための話です。引き止めのよくある例として、次のようなものがあります。
条件を出される(給料・部署・役職など)
「給料を上げる」「部署を変える」と言われるケースです。
辞めたい理由がまさにそこなら、考え直す価値はあります。さきほどの「変えられる理由」にあたるからです。
ただ、理由がほかにあるなら、条件が変わっても気持ちは戻りにくいと思います。その場合は、「ありがたいお話ですが、気持ちは変わりません」と、はっきり伝えてかまいません。
情に訴えられる(「君がいないと困る」「期待していた」)
言われるとつらい言葉です。でも、これは上司の本音の一部でもあります。私が管理職として「辞めないでほしい」と思うのと同じです。
感謝は感謝として受け取り、決めたことは決めたこととして伝えましょう。困るのは事実でも、調整は職場の側で考えることです。
強く引き止められる(受け付けてもらえない・脅すような言い方)
退職を受け付けてもらえない、強い言葉で責められる、損害賠償や懲戒をちらつかされる、といった場合です。こうした場合は、一人で抱え込まず、後で書く公的な相談窓口に相談してください。
退職の法律の基本(ここだけ押さえる)
法律の細かい解説はしません。基本だけ書きます。
期間の定めのない雇用は、申し入れから2週間で終わる
期間の定めのない雇用(いわゆる正社員など)では、民法627条により、退職の申し入れから2週間で雇用が終わります。
契約社員など、期間の定めのある雇用(有期契約)は扱いが別です。
会社の就業規則に「退職は◯か月前までに申し出る」といった決まりがあることもあります。自分の会社の規則も確かめておきましょう。
退職願と退職届
一般に、退職願は「退職させてください」とお願いするもの、退職届は「退職します」と意思を伝えるもの、と説明されることが多いです。どちらを出すか迷ったら、会社の決まりを確かめてください。
退職日と有給休暇
年次有給休暇は、一般に法律で認められた働く人の権利です。残っている有給休暇をいつ使うか、退職日をいつにするかは、引き継ぎとあわせて会社と話し合って決めることが多い部分です。迷ったら、下の相談窓口で確認してください。
迷ったら公的な相談窓口へ
⚠️ どうなるかは、雇用の形や個別の事情しだいです。ネットの記事だけで判断しないでください。就業規則と法律の関係が分からないとき、話が進まないとき、強い引き止めに困っているときは、労働基準監督署や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーで確認してください。
退職を伝えるときの例文(感謝・決めたこと・引き継ぎ)
伝えるときは、次の3つを入れると落ち着いて話せます。
1. 感謝:お世話になったこと
2. 決めたこと:相談ではなく、決めたことだと伝える
3. 引き継ぎ:最後まで責任を持つ姿勢を見せる
例文
「これまでいろいろと教えていただき、ありがとうございました。考えた結果、退職することに決めました。気持ちは固まっています。最終日まで、引き継ぎはしっかりやります。」
引き止められたら、こう返します。
「お気持ちはありがたいです。ただ、自分で考えて決めたことなので、変えるつもりはありません。引き継ぎで困らないよう、できることはやります。」
変えられる理由は一度伝える。不満は「次にやりたいこと」で話す
退職の理由をどこまで話すかは、理由の種類で分けるとよいと思います。
- 職場の中で変えられる理由なら、一度は伝えてみる
- 変えられない理由や、職場・人への不満なら、全部は言わず「次に何をしたいか」で話す
私は中途採用の面接官として、応募者に退職理由を聞いています。そのとき引っかかるのは、不満を口にすること自体です。不満を持つのは自然なことですが、退職理由は「次に何をしたいか」で話してほしいと思っています。
これは面接の話ですが、上司に伝えるときも同じ形にしておくと、話がこじれにくく、次の面接の準備にもなります。
(面接する側が何を見ているかは、製造業の転職ガイド|採用する側の課長が本音で解説に書いています)
引き継ぎは、最後の印象になる
現場の仕事は、つながっています。手順や注意点を残し、後任に伝えてから辞める人は、辞めたあとも「ちゃんとした人だった」と覚えてもらいやすいものです。
円満に辞めておくと、あとで選べる道も減りにくくなります。辞めた会社に戻る、という道もあります(出戻り転職はできる。ただし同じ椅子とは限らない)。
部下に「辞めたい」と言われた管理職の方へ
ここからは、言われる側の方へ。私が部下に「辞めたい」と言われたときにしてきたことは、多くありません。
まず話を聞く。理由を聞く
最初にやったのは、話をすること、理由を聞くことでした。
辞めてほしくない気持ちが先に立つと、「考え直してくれ」から入りたくなる人も多いと思います。でも、理由が分からないままでは、改善できるのかどうかも分かりません。
変えられる理由なら、お互いに改善する
上で書いたとおり、私の場合は理由(人間関係)を聞いて、お互いに改善しました。
人を変えることはできません。ただ、話を聞いて、お互いに修正することはあります。
「後悔しないならば、辞めればいい」も伝えていい
私は部下に、人として「後悔しないならば、辞めればいい」と伝えたことがあります。
管理職としては、辞めてほしくないのが本音です。それでも、最後に決めるのは本人です。全員が残るわけではなく、私のところでも1名は退職しました。
(部下との面談で何を伝えているかは、指示待ちの部下は変えられる?部下約40人を評価する課長が面談で伝えることにも書いています)
よくある質問
Q. 引き止められて残ると、あとで気まずくなりますか?
職場によると思います。一概には言えません。
私の部下で辞めずに続けている人とは、話したことが改善のきっかけになりました。
Q. 「将来のため」「成長している」と言われると、気持ちが揺れます
揺れるのは、ふつうのことです。私も昔、上司からそう伝えられたことがあります。
言われた内容が、自分の実感とも合っているかを確かめてみてください。合っているなら、考え直す材料になります。合っていないなら、言葉だけで決める必要はありません。
Q. 上司の都合で引き止められている気がします
その可能性はあります。私自身にも「辞めないでほしい」という管理職としての本音があります。
ただ、都合が混ざっていても、それだけで全部がウソとは限りません。どちらであっても、職場の調整をあなたひとりで背負う必要はないと思います。
Q. 退職を受け付けてもらえません
退職の意思をはっきり、記録に残る形で伝えておくとよい、と一般に言われています。それでも話が進まない場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
Q. 辞めると評価や印象が悪くなりますか?
辞めること自体で、その人が悪い人になるとは私は思いません。私の見る限り、印象を分けるのは伝え方と引き継ぎです。
(評価する側が日ごろ何を見ているかは、「評価されない仕事」の正体|部下約40人を評価する課長の本音に書いています)
まとめ:後悔しないほうを、自分で選ぶ
- 辞めたいと言われる側の課長には、本音が2つある。人としては「後悔しないならば辞めればいい」、管理職としては「調整が大変だから辞めないでほしい」
- 引き止めの言葉には、職場の都合が混ざっていることがある。都合の部分を、あなたひとりで背負わなくていい
- 辞めたい理由が職場の中で変えられるものかを一度確かめる。変えられる理由なら、一度は伝えてみる
- 決めたなら、感謝・決めたこと・引き継ぎの3つで伝える。不満ではなく「次にやりたいこと」で話す
- 期間の定めのない雇用なら、法律上は申し入れから2週間で終わる。迷ったら公的な相談窓口へ
私が部下に伝えたことのある言葉を、最後にもう一度書きます。
後悔しないならば、辞めればいい。
辞めても、残っても、自分で決めたことなら正しいと私は思います。引き止めの言葉を聞いたうえで、後悔しないほうを、あなた自身で選んでください。
いまの悩みに近いところから読んでください。
今の仕事がきつい
- 夜勤・交代勤務がつらい → 交代勤務は頭おかしい?シフトを組む側になった本音
- 三交代を何歳まで続けられるか不安 → 三交代はやめとけ?8年やった課長の答え
- 班長を任されてしんどい → 工場の班長はきつい?いま班長を任せる側の本音
- 生産技術を続けるか迷っている → 生産技術はきつい?20年やった課長の本音
- 顧客と現場の板ばさみがつらい(生産管理) → 生産管理はきつい?顧客と現場の間に立った課長の本音
- 不良が出るたびの顧客対応がつらい(品質保証) → 品質保証はきつい?営業・技術・製造で関わった課長の本音
- 技術営業への異動・転職が決まった → 技術営業はやめとけ?きつかったのは言葉でした
働き方・立場を変えたい
- 派遣から正社員になりたい → 派遣から正社員になれるのは2〜3割|登用を決める側の本音
- 期間工の給料・寮・きつさを知りたい → 期間工とは?実態を管理職が解説
- 前の会社に戻りたい → 出戻り転職はできる。ただし同じ椅子とは限らない
- 製造業で転職を考えている → 製造業の転職ガイド|採用する側が見ていること
- 工場の面接に落ちた → 面接する課長が見ている「落とす人・採る人」
- 異動したくない → 異動したくない人へ|異動を伝える側の課長の本音
- 年下の上司がやりにくい → 年下上司がやりにくい人へ|「支える側」に回った課長の話
- 辞めたいと伝えたら引き止められた → 退職の引き止めに迷ったら|辞めたいと言われる側の課長の本音
管理職・昇格で悩んでいる
- 管理職になりたくない → 断っている間も推薦は進んでいます
- 昇格試験に落ちた → 推薦する側が見ていた3つのこと
- 頑張っているのに評価されない → 「評価されない仕事」の正体|部下約40人を評価する課長の本音
- 管理職を辞めたい → 向いてないと感じる40代・50代へ
- 新人教育を丸投げされた・しんどい → 新人教育がしんどい・丸投げされたときの考え方
- つい人のせいにしてしまう(他責思考) → 原因自分論とは?人のせいにしていた課長が変わった話
- 部下のミスで責任を問われた → 部下のミスは上司の責任?課長がやっている3つのこと
- 上と部下の板挟みがつらい → 中間管理職の板挟みがつらい|無理だと分かる指示を伝えた課長の本音
- 部下のやる気がない → 部下のやる気がない|態度で分かる部下に、課長がしていること
- 指示待ちの部下に困っている → 指示待ちの部下は変えられる?課長が面談で伝えること
- 管理職になって孤独を感じる → 管理職は孤独?課員は今、私は未来を見ている
- 管理職を断り続けた先が気になる → 管理職を避けた40代・50代が直面する現実
- 役職定年が近づいてきた → 役職定年はつらいのか
その資格、取る意味はある?
- 簿記3級 → 経理じゃない私が取って、管理職になってから効いたこと
- 簿記3級が難しい・受かる気がしない → 簿記3級は難しい?難易度とFP3級との違い(48歳・1回で合格)
- QC検定 → 評価する側の課長が答える本当の扱い

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