簿記3級で、私がいちばん苦労したのは仕訳です。
その中でも特に苦労したのが、前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の4つでした。まとめて「経過勘定(けいかかんじょう)」と呼ばれるものです。
私は製造業で働く現場の課長です。経理の経験はありません。48歳のとき、独学4か月・約160時間(毎朝1時間+平日の昼休み30分)の勉強で、ネット試験に1回で合格しました。点数は80点台です。
この記事では、
- 私がつまずいた仕訳
- 勘定科目の覚え方の基本(5つのグループ)
- 経過勘定4つの意味と、仕訳の形(例つき)
- 私がどうやって越えたか
- ほかに苦労した仕訳
を書きます。
先に書いておくと、私が越えた方法はくり返し解くことです。特別な覚え方はしていません。そのぶん、この記事では「何をくり返すのか」が分かるように、仕訳の形をはっきり並べました。
簿記3級で私がつまずいた仕訳
先に取ったFP3級より、簿記3級のほうが難しく感じました。一番の理由は、仕訳の考え方です。
仕訳の中で、私が苦労した所は次のとおりです。
| 苦労した所 | どんな仕訳か(一般的な説明) |
|---|---|
| 前払費用・未払費用・前受収益・未収収益(いちばん苦労した) | 決算のときに、費用や収益をその年の分に合わせる仕訳 |
| 現金過不足 | 帳簿の現金と、実際の現金が合わないときの仕訳 |
| 小口現金 | 日々の小さな支払いのために、係に渡しておくお金の仕訳 |
| 固定資産の売却 | 使っていた備品などを売ったときの仕訳 |
| 貸倒引当金 | 売掛金などが回収できなくなるときに備える仕訳 |
| 手形・電子記録債権 | 代金を、手形や電子的な記録で受け取る・支払うときの仕訳 |
つまずき全体(仕訳・決算整理と精算表・試験時間)は、こちらにまとめています。
→ 簿記3級は難しい?難易度とFP3級との違いを、経理未経験の48歳が1回合格して答えます
経過勘定に入る前に、仕訳の土台になる「勘定科目の基本」から書きます。
勘定科目の覚え方の基本|「仕訳がわからない」ときに確かめたいこと
ここは私の体験ではなく、簿記の教科書に書かれている基本です。ここがあいまいなままだと、経過勘定でも手が止まりやすくなります。
勘定科目は、5つのグループに分けて考える
勘定科目は、資産・負債・純資産・収益・費用の5つのグループのどれかに入ります。そして、グループごとに「増えたら左(借方)か右(貸方)か」が決まっています。
| グループ | 科目の例 | 増えたら(発生したら) | 減ったら |
|---|---|---|---|
| 資産 | 現金・売掛金・前払保険料・未収利息 | 借方(左) | 貸方(右) |
| 負債 | 買掛金・借入金・未払利息・前受家賃 | 貸方(右) | 借方(左) |
| 純資産 | 資本金 | 貸方(右) | 借方(左) |
| 収益 | 売上・受取利息・受取家賃 | 貸方(右) | 借方(左) |
| 費用 | 仕入・給料・保険料・支払利息 | 借方(左) | 貸方(右) |
このあと出てくる経過勘定の4つも、この表のどこかに入ります。前払費用・未収収益は資産、未払費用・前受収益は負債です。
仕訳がわからないときの確かめ方
仕訳で手が止まったときは、次の順番で確かめる方法があります。
- この取引で、何が増えて、何が減ったか(お金・物・権利・義務)を言葉にする
- それぞれの科目が、5つのグループのどれかを決める
- 上の表で、左(借方)か右(貸方)かを決める
- 左と右の金額の合計が同じになっているか確かめる
勘定科目の名前は一つずつ覚えるより、「どのグループの科目か」と一緒に覚えると考えると、左右を整理しやすくなります。
経過勘定(前払費用・未払費用・前受収益・未収収益)とは
4つに共通すること
経過勘定は、主に決算整理で使う仕訳です。
家賃・利息・保険料のように、時間がたつのに合わせてかかる(受け取る)ものは、お金を払った(受け取った)時期と、そのサービスを使った(提供した)時期がずれることがあります。
決算では、このずれを直して、その年の分の費用・収益だけが残るようにします。そのときに使うのが、この4つです。
4つの早見表
| 名前 | お金とサービス | 分類 | 科目名の例 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | お金は先に払った/サービスは翌期に受ける | 資産 | 前払保険料・前払家賃 |
| 未払費用 | サービスはもう受けた/お金はまだ払っていない | 負債 | 未払利息・未払家賃 |
| 前受収益 | お金は先に受け取った/サービスは翌期に提供する | 負債 | 前受家賃・前受地代 |
| 未収収益 | サービスはもう提供した/お金はまだ受け取っていない | 資産 | 未収利息・未収家賃 |
仕訳では、「前払保険料」「未払利息」のように中身が分かる科目名を使うのが一般的です。
「前払・未収は、あとで受け取れる(権利)から資産。未払・前受は、あとで払う・サービスを提供する(義務)から負債」と考えると整理しやすくなります。
決算整理と、翌期首の「再振替仕訳」
経過勘定は、決算で計上したら、翌期の最初の日(期首)に、決算整理とちょうど逆の仕訳をします。これを再振替仕訳(さいふりかえしわけ)といいます。
経過勘定は「決算の時点のずれ」を直すための一時的な科目なので、翌期首に元の費用・収益の科目に戻すためです。
以下の例は、決算日を3月31日としています。金額は説明のために作ったものです。
経過勘定の仕訳例|4つを同じ形で並べる
前払費用(例:保険料を1年分先に払った)
12月1日に、1年分(12月1日〜翌年11月30日)の保険料12,000円を現金で払った。
12月1日(払ったとき)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 12,000 | 現金 | 12,000 |
3月31日(決算整理):今期の分は12月〜3月の4か月(4,000円)。翌期の分は4月〜11月の8か月で、8,000円。この8,000円を費用から外して、資産にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払保険料 | 8,000 | 保険料 | 8,000 |
4月1日(翌期首の再振替)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 8,000 | 前払保険料 | 8,000 |
未払費用(例:借入金の利息をまだ払っていない)
1月1日に、銀行から100,000円を借り入れた。利息は年6%で、同じ年の12月31日に1年分の利息をまとめて払う約束。
3月31日(決算整理):1月〜3月の3か月分の利息は、まだ払っていないが、今期の費用です。100,000円 × 6% × 3/12 = 1,500円。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 1,500 | 未払利息 | 1,500 |
4月1日(翌期首の再振替)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払利息 | 1,500 | 支払利息 | 1,500 |
前受収益(例:家賃を半年分先に受け取った)
2月1日に、貸している建物の家賃6か月分(2月1日〜7月31日)60,000円を現金で受け取った。
2月1日(受け取ったとき)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 60,000 | 受取家賃 | 60,000 |
3月31日(決算整理):今期の分は2月・3月の2か月(20,000円)。翌期の分は4月〜7月の4か月で、40,000円。この40,000円を収益から外して、負債にします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取家賃 | 40,000 | 前受家賃 | 40,000 |
4月1日(翌期首の再振替)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前受家賃 | 40,000 | 受取家賃 | 40,000 |
未収収益(例:貸付金の利息をまだ受け取っていない)
12月1日に、取引先に200,000円を貸し付けた。利息は年3%で、1年後の返済日にまとめて受け取る約束。
3月31日(決算整理):12月〜3月の4か月分の利息は、まだ受け取っていないが、今期の収益です。200,000円 × 3% × 4/12 = 2,000円。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未収利息 | 2,000 | 受取利息 | 2,000 |
4月1日(翌期首の再振替)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取利息 | 2,000 | 未収利息 | 2,000 |
4つを並べると、形は2種類
| 名前 | 決算整理で、費用・収益をどうするか | 決算整理の仕訳の形 |
|---|---|---|
| 前払費用 | 費用を減らす(翌期の分を外す) | (借)前払〇〇 /(貸)費用の科目 |
| 未払費用 | 費用を増やす(今期の分を足す) | (借)費用の科目 /(貸)未払〇〇 |
| 前受収益 | 収益を減らす(翌期の分を外す) | (借)収益の科目 /(貸)前受〇〇 |
| 未収収益 | 収益を増やす(今期の分を足す) | (借)未収〇〇 /(貸)収益の科目 |
- 「前払」「前受」は、先にお金が動いた分のうち、翌期の分を外す仕訳
- 「未払」「未収」は、まだお金が動いていないが、今期の分を足す仕訳
月数で金額を出すときは、いつからいつまでが今期で、いつからが翌期かを、問題文の日付から数えます。日付を横に1本の線で書いて、決算日で区切る(時間の線で考える)と整理しやすくなります。
私は、くり返し解いて越えた
経過勘定も、ほかの仕訳も、私が越えた方法はくり返し解くことです。
平日の昼休みは問題集で、空き時間はスマホのパブロフ簿記アプリで、くり返し解いていました。仕訳は、1か月くらいで、まちがえなくなってきました。
くり返したのは、くり返さないと早く終わらないし、間違える可能性もあるからです。
第1問(仕訳)の目標時間や、60分の時間配分は、こちらに書いています。
→ 簿記3級の配点と時間配分|2027年4月の配点変更と、ネット試験に1回で受かった私の解く順番
ほかに苦労した仕訳|現金過不足・小口現金・固定資産の売却・貸倒引当金・手形・電子記録債権
経過勘定のほかに苦労した所も、短く書いておきます。ここも、私がやったのはくり返し解くことです。
| 項目 | ややこしくなりやすい点(一般的な説明) |
|---|---|
| 現金過不足 | いったん仮の科目で受けて、あとでもう一度振り替える(2段階) |
| 小口現金 | 係が使った分を報告してもらい、同じ額を補給する |
| 固定資産の売却 | 取得原価・減価償却累計額・売った金額の3つの数字が出てくる |
| 貸倒引当金 | 見積もった額そのものではなく、残高との差を仕訳する |
| 手形 | 受け取る側と振り出す側で、科目が変わる |
| 電子記録債権 | 受け取る側は「債権」、支払う側は「債務」と、名前が似ている |
現金過不足
帳簿と実際の現金が合わないとき、いったん「現金過不足」で受けておきます。原因が分かれば正しい科目へ、決算まで分からなければ、足りない分は「雑損」、多い分は「雑益」に振り替えます。
例:実際の現金が帳簿より1,000円少なかった(上)。決算まで原因が分からなかった(下)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金過不足 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 雑損 | 1,000 | 現金過不足 | 1,000 |
小口現金
小さな支払いのために係に渡しておくお金です。使った分の報告を受けて、同じ額を補給するやり方(定額資金前渡制度)で出てきます。
例:交通費3,000円・消耗品費2,000円の報告を受け、ただちに小切手を振り出して補給した。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 3,000 | 当座預金 | 5,000 |
| 消耗品費 | 2,000 |
固定資産の売却
売った備品などの取得原価と減価償却累計額をまとめて消し、帳簿の金額と売った金額との差を「固定資産売却益」または「固定資産売却損」にします。下の例は、減価償却累計額を使う間接法の記帳です。
例:期首に、備品(取得原価400,000円・減価償却累計額240,000円)を150,000円で売り、代金は月末に受け取る。帳簿の金額160,000円より10,000円安いので売却損です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 備品減価償却累計額 | 240,000 | 備品 | 400,000 |
| 未収入金 | 150,000 | ||
| 固定資産売却損 | 10,000 |
商品以外のもの(備品など)を売って、代金をあとで受け取るときは、売掛金ではなく未収入金を使います。期の途中で売った場合は、その期の分の減価償却費も仕訳に入れます。
貸倒引当金
売掛金などが回収できなくなるときに備えて、決算で見積もっておく仕訳です。3級の学習では、見積もった額と今の残高との差だけを足す差額補充法で学ぶのが一般的です。
例:売掛金500,000円の2%(10,000円)を見積もる。残高は3,000円なので、差の7,000円を足す。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 貸倒引当金繰入 | 7,000 | 貸倒引当金 | 7,000 |
残高のほうが多いときは、多い分を「貸倒引当金戻入」で減らします。
手形
代金を約束手形で受け取る・支払うときの仕訳です。受け取る側は「受取手形」(資産)、振り出す側は「支払手形」(負債)を使います。
予備校のTACは、2027年4月1日以降の試験から手形が出題されなくなる見込みと解説しています(TACの解説ページ)。受ける前に、日本商工会議所の公式ページで最新の出題区分を確認してください。
電子記録債権
代金を電子的な記録で受け取る・支払うときの仕訳です。受け取る側は「電子記録債権」(資産)、支払う側は「電子記録債務」(負債)を使います。
例:売掛金50,000円について、取引先の承諾を得て、電子記録債権の発生記録が行われた。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 電子記録債権 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
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取ったあとに役立ったこと
製造業で働く私が、簿記3級を取ったあと何が変わったかは、こちらに書いています。
→ 簿記3級は意味ない?経理じゃない管理職が取って変わったこと
まとめ
- 私が簿記3級でいちばん苦労したのは、前払費用・未払費用・前受収益・未収収益(経過勘定)
- 勘定科目は、5つのグループ(資産・負債・純資産・収益・費用)と、増えたら左か右かを一緒に覚える
- 経過勘定は、決算で費用・収益をその年の分に合わせる仕訳。前払費用・未収収益は資産、未払費用・前受収益は負債
- 決算整理で計上したら、翌期首に逆の仕訳(再振替仕訳)をする
- ほかに、現金過不足・小口現金・固定資産の売却・貸倒引当金・手形・電子記録債権も苦労した
- 私が越えた方法は、くり返し解くこと。平日の昼休みは問題集で、空き時間はスマホのパブロフ簿記アプリで、くり返し解いた。仕訳は、1か月くらいでまちがえなくなってきた
- 48歳・経理経験なし・独学4か月・約160時間で、ネット試験に1回で合格(80点台)
仕訳は、覚えるだけでは解けません。だからこそ、同じ形をくり返し解くことから始めてみてください。
- まず難しさを知る:簿記3級は難しい?難易度とFP3級との違い
- 一番の壁を越える:仕訳の覚え方|前払・未払・前受・未収
- 本番に備える:配点と時間配分|2027年4月の配点変更
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